龍馬ゆかりの地を行く 水陸に利点ある京の拠点 酢屋(産経新聞)

 京都の繁華街、河原町通から高瀬川へ向かう小路は、「龍馬通」と呼ばれている。かつて坂本龍馬も歩いたとされ、道沿いにはカラオケ店や飲食店が立ち並ぶが、通りを進むと異彩を放つ建物が目に入る。坂本龍馬が暗殺される3日前まで過ごしていたと伝えられる材木商「酢屋(すや)」である。

 酢屋の事業は現在、別の場所で営まれており、江戸時代の面影を残す当時の建物は、龍馬に関する史料を展示する「ギャラリー龍馬」などとして運営されている。

 2階の表通りに面した場所には、出格子がみえるスペースがある。当時は、6〜8畳くらいの部屋だったというが、現在は2畳ほどの畳の上に机を配し、机上にはすずりと筆が置かれている。

 「手紙を書いていた龍馬の部屋を再現してみました。あの出格子から、龍馬は持っていたピストルの試し打ちをしていたそうです」

 酢屋の10代目当主にあたるという中川敦子さんは、そんなエピソードを交えながら、館内を案内してくれた。

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 龍馬が投宿先として酢屋に着目したのは、立地条件が大きかったようだ。

 かつては浜地で、高瀬川へつながる舟入(港)が広がっていたとされ、中川さんは「陸路や水路に利点があったので、龍馬は酢屋を拠点にしました」と説明する。

 幕末当時、酢屋の当主は高瀬川の木材独占輸送権を得て運送業も行っていた6代目の酢屋嘉兵衛。取引先の土佐藩で龍馬と知り合ったとされる嘉兵衛は、京都に移った龍馬に支援を惜しまず、酢屋の2階には海援隊京都本部が置かれていたという。

 「海援隊が京に入ってきた目的は、龍馬が一番やりたかった『国を変える』ということですが、新しい日本を目指した龍馬に理解を示さなければできないことです。(嘉兵衛は)命がけで匿い、勤王家であっても黙っていました」と、中川さんは祖先の功績を回想する。

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 慶應3(1867)年6月、龍馬は酢屋で、姉の乙女に手紙を書いた。投宿を知らせる内容だったが、その手紙は長さ5メートルにもおよんだという。

 幕末史に詳しい霊山歴史館(京都市東山区)の学芸課長、木村幸比古さんによると、現存する龍馬の手紙は家族や他の志士らにあてた130通余だが、なかでも乙女あてが13通で最も多いそうだ。

 「乙女姉さんは母親代わりでしたからね。兄に手紙を送ったところで『早よ帰ってこい、うろうろするな』の一点張りだし」と、木村さんは笑う。

 幼いころ母を亡くした坂本龍馬は、生涯にわたって姉の乙女を慕っていた。龍馬より3歳年上で、身長175センチ、体重110キロの大柄な女性だったとされ、「坂本のお仁王様」とも呼ばれていた。剣術や馬術、水練など何でもこなし、少年期は泣き虫だったとされる龍馬を教育した。

 出格子から高瀬川を舟が行き来する様子がみえる酢屋は、日増しに身に危険の迫る龍馬にとって心癒やされる空間でもあったのだろう。そして、郷里・土佐にいる乙女はいつまでも大きな心の支えだったようで、龍馬は机に向かいながら熱心に筆を走らせていたに違いない。

 そんな龍馬にとって、酢屋は安住の地だったが、やがて、この場所でも身の危険を感じるようになり、醤油(しょうゆ)商の近江屋に移ることになる。



 「酢屋」 享保6(1721)年創業という京都の材木商。現当主は10代目になるが、事業はグループ企業の千本銘木商会(京都市、中川敦子社長)に引き継がれ、酢屋は従来の建物で「創作木工芸酢屋」や「ギャラリー龍馬」を運営する会社として存続する。海援隊の支援に尽力した6代目当主時代、海援隊京都本部が置かれ、坂本龍馬や陸奥宗光、長岡謙吉ら数多くの藩士が投宿していた。毎年、龍馬の命日とされる11月15日には「追悼献酒」が行われ、あわせて海援隊士が龍馬が暗殺される模様をまとめた「涙痕帖」が特別公開されている。(山田淳史)

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